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太りやすい体は悪いものか? chapter 2:低体重の危険性 1

今時分メタボを批判するひとにはこと欠かないが、低体重の危険性を説くひとはどのくらいいるのだろうか?
痩身至上主義の中で中肉中背ややや太めのひとが自信を保つのは難しい。彼らは健康的な体格でありながら現代社会においては”太っている” と認識され、それはしばしば本人の怠け性やだらしなさを示唆する。
太っているひとがきちんとしていない、というのはステレオタイプな見方である。ひとを、ある特性によってグループ分けしてラベルを貼るのは簡単かもしれないがあまり賢いことではない。太っていても勤勉なひともいるし、痩せていてだらしないひともいる。外見ひとつでひとを見通すことはできない。

太っていることがなぜ社会的スティグマとなるのか。それは、そうすればダイエット産業が儲かるからというのが一因にある。痩せイコール美という認識を大衆に植え付ければ会社は潤う。一昔前の日本、あるいは他の文化では、現在太っているとされる体格は美しいとみなされた。木の枝のようにガリガリであることが”よい”とされているのは現代のこの文化が作り上げた結果であり普遍的なものではない。

ではなぜ「痩せ」賛美が危険で問題なのか?それは実現不可能な理想像に常に晒されることにより目標(低体重)に到達できない自分を責め自己評価を下げ悪い精神状態(ときにうつ病、自傷行為、摂食障害にかかりやすくなる) を誘発するだけでなく、ひとを過度で危険なダイエットに走らせうるからである。(そしてそれは摂食障害と紙一重の位置にある)世界保健機構が低体重と定義づけているのはbmi18.5以下である。これ以下の体重となると身体にさまざまな悪影響を与えやすいといわれ、骨粗鬆症や貧血、不整脈のリスクが増す。心臓に負担がかかりやすくなるのは、体脂肪があまりに少ない状態だとからだはエネルギーを作れず生きるのに必要な熱が失われていき、それを補うため、筋肉の組織を分解してエネルギーにし始めるからである。つまり筋肉を壊して体温を保ったり、動いたり思考したりするためのエネルギーとするので(ちなみに脳は普段グルコースをエネルギー源としているが、それがなければタンパク質ーーつまり筋肉ーーを分解して得られるアミノ酸をガソリンにすることができる) 筋組織は痩せ衰え、機能しにくくなる。手や足の筋肉が多少減ったところでただちに生命に危険を及ぼすことはないが、心筋が弱ると不整脈を起こしやすくなり、時にそれは致死的となる。拒食症患者の致死率が精神疾患の中で最も高い一因にこの心臓の衰弱とそれに伴う発作があげられる。

過度の食事制限は上記のような状態を引き起こすだけでなく、免疫力を下げ感染症にかかりやすくする。また、病的なダイエットは過食、下剤の多用、嘔吐、代償行動としての運動を伴うことがある。これは摂食障害の領域であり、程度が酷いと電解質異常(電解質というのはカリウムやナトリウムなどのこと。人間の体液の電解質濃度はかなり厳格に調整されており、バランスが崩れると意識障害や不整脈を引き起こし、時には死に至ることもある。この電解質のバランスを体液と近くし吸収されやすくしたのがスポーツ飲料やos1などである) や虫歯を引き起こしたり、下剤がないと排便できなくなったりする。まだあまりこの分野に関しては研究が進んでおらず裏付けデータはないが、過食嘔吐症が胃不全麻痺の発症に関与している可能性についての指摘もある。(胃不全麻痺は胃が食べ物を小腸に送れなくなる病気。症状が酷いと食べても吐いてしまいものをたべられなくなる。難病で、亡くなることもある)