月別アーカイブ: 2014年12月

ミシガン大学の生徒の性的不正に対するポリシーから学ぶ性的行為への「同意」の定義

米国ミシガン大学のサイトに学生の不正な性行為を諌めるためのポリシーがあり、興味深かったので抜粋して翻訳する。ボディタッチ、セックスなどさまざまのレベルの性的接触を含む性行為に、合意が必要だという大前提がまずある。なぜかというと、それは自分の体を一時他人に明け渡すということであり、自分の領域に他人を入れるからだ。しかしながらこの「合意:consent」の定義は日本においては曖昧な印象があり(

お茶を濁すというか、白黒はっきりしないことを美徳とする民族性の影響もあるのかな?はっきりノ―ということが、性行為に限らず難しい文化ということも関係しているのかな?)、比較的定義付けをしっかりしているアメリカを見習うことは、性的に搾取されやすい女性や子供、しょうがい者、性的少数者のみならず、少ないが確実に存在する性犯罪の男性被害者(アメリカでは10%は男性といわれる。加害者の99%は男性であるというデータもある→University of California Santa Cruzの女性学の教授Bettina Aptheker氏の2009年に行われたレクチャー第十二回、Politics of Rape(レイプのポリティクス)において言及されている。PodcastでUC santa cruzを検索で聴けます)にとって、そして社会の構成員全体にとってよりよい共同体形成のための第一歩となる気がする。

露出の高い服を着て夜道をひとりで歩いていたら性犯罪を誘起しているのだろうか?違う。愛想を振りまく人はセックスを誘っていると推測していいのだろうか、違う。恋人同士なら、あるいは夫婦なら、相手の都合に構わずセックスを強要してよいのだろうか?違う。結婚は性行為の同意を前提とするのか?もちろん違う。誰だってしたくないときはあるし、疲れているときもあるし、ひとりになりたいときもある。それは相手を嫌っていることを意味しない。好意があれば何をしてもいいというものではない。すべての人間は自分の体をいつどこでどのように使うか、に対しての主権があり、それは夫や、恋人に帰属するものではない、とミシガン大の性犯罪防止センターは言っている。

 

At the heart of consent is the idea that every person has a right to personal sovereignty – not to be acted upon by someone else in a sexual manner unless they give clear permission to do so.  It is the responsibility of the person initiating the sexual activity to get this permission.  Absence of clear permission means you can’t touch someone, not that you can.

Sexual assault prevention and awareness center, consent and coercion, University of michigan student life

 

合意についての核となる考え方は「全ての人間は個人的主権をもっている」というものだ。つまり、明確な承認なしに他人に性的行為をされない権利である。性行為の行為者は相手からこの承認を得る義務がある。相手の、性行為に対する明確な承認の欠如(あいまいな態度)は、承認を意味せず、拒否と考えるべきである。

 

 

合意と脅迫の線引きを明確にすることで、ひとの主権を保護することが容易になる。同意というのは、服装や態度によって得られるものではなく、一度関係があったり付き合っていたり婚姻関係にあるという事実のみで得られるものでもなく、明確な承認なしに推測されるものでもない。加害者のアルコールの摂取による強制的な性行為も許容されない。(ミシガン州の法律においては加害者のアルコールの摂取の有無にかかわらず加害者は同様に裁かれる)沈黙は同意を意味しない。(それは拒絶と推測されるべきで、性行為の行為者は相手から明確な承認を得る必要があり、それがない場合は強制的な性行為である)

また、二者の間に権力の差がある場合は(雇用主と従業員、教師と生徒など)2人のセクシュアルな関係にこの権力構造が影響を及ぼしていないとは考えにくい。

ミシガン大スチューデントセンターのsexual assault prevention and awareness centerは最後にこう締めくくっている。

 

When coercion is used to convince a person to have sex or engage in sexual activities when they not want to do so, this is sexual assault, as defined by Michigan law.

Some examples of coercion are saying things like “If you loved me, you would”, threatening self-harm, or making someone feel as though they owe someone sex for buying them dinner, giving them gifts, etc.

 

このような脅迫が相手の意に反する性行為への説得に使われるばあい、これはミシガン州法によってsexual assault(レイプ・強制わいせつ)と定められている。脅迫は、例えば「愛しているならセックスしてくれるはずだ」と言ったり、自傷行為をほのめかしたり、食事代の支払いやプレゼントと引き換えにセックスしなければならないかのように相手に感じさせたりすることで行われる。

 

(感想)

 

ある犯罪が、犯罪被害者の落ち度によることはない。TEDxTalksで誰か女性権利擁護者が言っていたが、性犯罪は女性問題ではない。性犯罪で犯罪におよぶのはほとんどが男性であり、問題となるのは男性だからだ。また、被害者のおよそ10%は男性の加害による男性の被害者だ。(つまり被害者が女性に限らない)

端的にいうと性犯罪は男性問題である。だから女性の服装とか一人歩きとか言動(あなたが彼を刺激するようなことを言ったんじゃないの?)に焦点をあてるのではなく、男性がなぜこれほどまで加害におよぶのかを研究した方が解決が早いし筋道だっている。

「性犯罪は男性問題」という認識と、「セックスの合意をとるのは、行為者側の責任」というコンセンサス、どこまでが合意でどこからが脅迫を用いた性行為なのかを、二者の間の権力構造を理解すると共に意識していくことが重要であろうと思う。