映像作品における性差別(NEW YORK FILM ACADEMY presents)

NEWYORK FILM ACADEMYという映画学校によれば、映画の制作過程から内容まで、映像業界にも性差別が蔓延しているそうです。(以下訳)
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<映像作品における性差別>女性が主役となったアクション映画、ハンガーゲーム:Catching Fireの史上類を見ないヒットの幕開けが先週末にありましたが、New York Film Academyではこれをきっかけに、映像作品における女性の描かれ方に何か進展があったのかを調べることにしました。調査したデータを見返してみると、ハリウッドは今だ根強い性差別を温存させていることは明らかでした。勿論、多くの女性監督、女性キャラクターや出演者が現状を変えようと努力していることを否定するわけではありません。加えて、自主制作映画においては、今年のサンダンス映画祭に出品された作品の監督の半数を女性が占めています。しかし、まだまだ上映される回数も範囲も少ないです。映像作品における性差別問題に光をあてることによって、女性がメインストリームの作品により参加できるようにするにはどうすればいいか、という議論が巻き起こることを期待しています。

ーーーーーーーーーー(以下、最下部の図の邦訳)

ニューヨークフィルムアカデミーによる、<映像作品における性差別>

・女性の描かれ方(2007~2012年の売上上位500作品において)

30.8%の女性キャラクターがちゃんとした会話をしている/28.8%の女性俳優がセクシーな衣裳を着ている(男性は7.0%)/26.2%の女性の俳優が半裸になる(男性9.4%)/10.7%の作品が、役を男女半々にキャスティングしている/男性俳優と女性俳優の出演の平均の比率は、2.25:1/2007年から2012年にかけ、十代の少女のヌードが登場する割合が32.5%増加/重要な役どころの女性キャラクターのおよそ三分の一がセクシーな衣裳を着ているか、半裸になっている/監督が女性のとき、女性キャラクターが作品中に登場する割合が10.6%、脚本家が女性のとき8.7%増加/アメリカで、映画の観客の半分は女性

・映画業界で最も影響力がある五人の女性

KATHRYN BIGELOW-監督、脚本家、プロデューサー:2008年、The Hurt Lockerという作品で、女性監督として唯一アカデミー賞を受賞した人。Bigelowは20年以上映画製作をし続け、初期には1991年に公開されたPoint Breakで、そして昨年はZero Dark Thirtyで成功をおさめている。

AVA DUVERNAY-監督、脚本家、市場関係者:今年初め、二作目の監督作品、Middle of Nowhereがオスカー賞のノミネートから外れ騒ぎを起こしたが、彼女は2012年にアフリカ系アメリカ人の女性の監督として初めて、サンダンス映画祭で最優秀監督賞を獲得するという快挙を成し遂げている。

DIABLO CODY-脚本家、監督、プロデューサー:初めて脚本した作品Junoで名声とアカデミー賞を得る。彼女は過去六年間でハリウッドでますます勢いを増し、精力的に活動範囲を広げている。Showtime seriesのThe United States of Taraの制作、脚本をはじめ、Jennifer’s BodyとYoung Adultの脚本家とプロデューサーを担当したり、今年発表された初監督作品、Paradiseなどを手掛けている。

KATHLEEN KENNEDY:-プロデューサー:Kennedyは最も成功をおさめたプロデューサーの一人であり、今までに六十作品以上を手掛けている。初期にはRaiders of the Lost ArkとE.T.でヒットを記録し、続いてJurassic Park TrilogyとThe Sixth Senseを手掛けた。昨年、彼女はルーカス作品の第一人者と呼ばれるようになり、現在Star Wars:Episode VIIの制作中である。

LENA DUNHAM:監督、脚本家、俳優:2010年に脚本、監督した作品Tiny Funitureのリリースに続き、HBO(home box officeの略。アメリカの有料ケーブルテレビ放送局)が彼女が制作したシリーズ作品Girlsを取り上げるなど、彼女は有名になった。Girlsは来年の一月に第3シーズンが始まる予定だ。

・産業における性差別

映画産業で働く男女比は、男:女=5:1/女性監督は、フィクション(16.9%)よりノンフィクション、ドキュメンタリー作品(34.5%)を多く撮る/2012年の上位250作品における女性監督の割合:全体の9%、女性脚本家の割合:15%、女性チーフプロデューサー:17%、女性プロデューサー:25%、女性編集者:20%、女性カメラマン:2%/重要な職に女性が雇用されている人数が0-1人の作品が38%、2人が23%、3-5人が28%、6-9人が10%/FORBES(アメリカのビジネス雑誌)によれば、2013年に最も稼いだ女性俳優の給料は合計181万ドル、一方最も稼いだ男性俳優の給金の合計は465万ドル/2013年、女性俳優の中で最も稼いだアンジェリーナ・ジョリーは、最も稼いだ男性俳優の上位10人のうち、最下位から二番目のDenzel Washingtonと同額を手にしている。更に、男性俳優よりも女性俳優の方が、年齢によって成功を左右されている。/一作品につき貰える給料の額上位16位は、全て男性俳優で占められている。最も稼いだ男性俳優トップ10の平均年齢、46.5歳:一方女性俳優トップ10の平均年齢、34.8歳。

・過去10年間で良かった女性キャラクター

ハンガーゲームのKATNISS EVERDEEN(16) 特徴:誇り高く、意志決定力があり、勇敢でしたたかで現実的。/ドラゴンタトゥーの女のLISBETH SALANDER(25) 特徴:知的で公正で反社会的で鮮烈で物覚えがよく、粘り強く、賢明。/Diary of a Mad Black Woman(30代) 特徴:ロマンチストで忠誠心があり、信頼でき、柔軟性があり、復讐に燃えている/PersepolisのMARJANE SATRAPI(10-22) 特徴:攻撃的、自分を過信している、情熱的、サバイバルスキルがある、早熟の、不屈の精神をもった女性/メリダとおそろしの森(英題BRAVE-勇気)のメリダ(16) 特徴;社交的、勢いがある、わがまま、強情、戦士、屈強さをもっている。

・賞における性差別ーアカデミー賞の長い歴史の中で、四人の女性監督が最優秀監督賞にノミネートされたが、BIGELOW一人だけが受賞した。/2013年の第85回アカデミー賞で、19の部門において、男性140人、女性35人がノミネートされた。そのうち、監督賞、撮影賞、脚本賞(単独でのシナリオ)、音楽賞(独自の作曲)に、女性はノミネートされなかった。/過去85年間で、7人の女性プロデューサーが最優秀映画賞を受賞し、その受賞も、全てが男性のプロデューサーと共同で撮った作品だった/73年間でたった8人の女性しか最優秀脚本賞を受賞していない/85年間で8人の女性が最優秀改作脚本賞を受賞/77%のオスカー審査員が男性/2000年からこちら、最優秀主演女優賞を受賞する女性俳優の平均年齢が36歳なのに対し、最優秀主演男優賞の受賞の平均年齢は44歳。

・映画産業に関わる女性たち(省略)

 
New York Film Academy takes a look at gender inequality in film
 
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このような映像における性差別の現状を、データとしてはっきりと把握すると、より、自分が映像作品を見る時に感じる息苦しさの要員を突き詰めて考えることができる気がします。多くの映画には、”男性の理想像としての女性”しか描かれておらず、“現実の女性”はあまり登場してこないように感じます。今にも折れそうな腰や、磨き抜かれた容姿、依存的なライフスタイル、足手まといとしての”女性”ばかり描かれるのは、女としては遺憾です。男性だから勇敢なわけでも、女性だから引っ込み思案なわけでもなく、”その人が”勇敢だったり、臆病だったりするのではないでしょうか。それにわざわざ性別という属性を付加する必要はないと思います。また、この資料にも載っていましたが、映像作品で、女性はより、性的に客体化される(本人が主体性をもった一つの独立した人間として描かれず、<主に>男性目線を通じて男性にとって魅力的な女性が描かれること。対義語:主体化)ことが多く、物語の進行のキーパーソンとなる女性でさえ、体を露出していることが多々あるそうです。これは、女性に、主体性を失わせるばかりではなく、男性に理想化した女性像を見せ、彼らの女性に対する認識を狂わせ、それが女性と男性の交流を阻害してしまうことにもなるかもしれません。女性についての神話は、女性にとって有害であるばかりでなく、男性にとっても有害です。いずれにせよ、「男性」「女性」とカテゴリー分けするよりも、「その人」に焦点を当てて、作品の中のキャラクターを描いていくのがいいと思いました。

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