精神疾患と女性

UKガーディアン誌による

精神疾患を国別でみる

という記事によると、全体として女性のほうが男性に比して二倍鬱病にかかりやすいそうです。

毎月のホルモン変動によるものとする向きもあるでしょうが、そしてそれも一部は事実だと思いますが、それだと壮年の女性の鬱病罹患率がやはり男性より高い理由が説明できません。

私は、これにはジェンダーの抑圧が、女性によりかかっているからだと考えます。慢性的な抑圧とは、例えば、1人で歩くときは常に周りを警戒しないといけないとか、電車に乗るときに痴漢に怯えなければいけないとか、常にそういう脅威に身を強張らせていなければならない状態のことです。女性は、1人旅さえ容易にはできません。知らない男性と密室におかれると、とてもストレスがたまります。ビルのエレベーターでさえ、ハラスメントに怯えなければなりません。もし、社会が、女性にハラスメントをした男性を厳しく罰し、顔写真を全国紙に晒し、二度と被害者の半径数キロ以内に近づけないという法律を持っていれば、このような心配は無用です。女性は尊重され、社会的地位があり、皆が敬意を払うために、ハラスメントはほとんど起きなくなるからです。しかし、今の状況ではそう楽観はできないのは明らかです。性犯罪は常に隣にあり、また、あることを許されています。人々は、女性を客体化し、尊厳を貶めることに何ら頓着しません。このような社会の中では、女性がよりうつ病にかかりやすいのは自明の理です。

女性の日々のストレスの種はもう一つあって、それは、「容姿を評価され続けること」です。太すぎる、細すぎる、背が高すぎる、ケバすぎる、地味すぎる、エロすぎる、色気がなさすぎる…etc 女性の容姿に対する批評は事欠きません。メディアが何のためらいもなく流す、「女は見た目がすべて。どんなに外見を磨いたとしても真に評価されることはない」というメッセージは思春期の少女たちの心を引き裂きます。そして、それに異を唱える聡明な大人もいません。審査員が男性である限り、女性は真に自分の体に自信を持つことはできません。「かわいいね、清楚だね、スラッとしていてかっこいいね」という賞賛も、「ブス、デブ」という蔑みと同じコインの裏と表です。評価者が男だからです。今日認められたとしても、明日には手のひらを返されるかもしれないし、男性には、自分の気に入らない女性を、容姿への言及を使って攻撃するという困った習性があるので、例え10人中8人が息を呑むような美女だとしても、「綺麗すぎて高飛車に見える」などと言われることもあるでしょう。

ボディイメージについての参考書籍として、デボラ・l・ロード著「キレイならいいのか」においては、ダイエット産業が儲けるために、コマーシャルなどで女性の身体イメージへの不安を煽り、(例:過剰に痩せていることを賞賛する。「あなたのそのからだ、大丈夫?」)購買意欲を増進させることが、いかに少女にとって悪い影響を及ぼすか述べられています。ある調査によると、それまでテレビのなかった辺境の民族の女性達は、近代化に伴ってテレビが設置された途端に、拒食症を発症しはじめたそうです。調査によれば、長くテレビを見るほど、女性の自己評価は下がると報告されています。これは、間違った身体イメージ(「バービー人形のようになりたい!」)を持つことによって、自らの体に自信をなくすからです。正しい身体イメージを持つことがいかに重要かは、このTeensHealthというサイトのBody Image and Self-esteemという記事で述べられています。自分がどういう体であるかは自分で決めたいですね。

このような「容姿を評価されることによるストレス」がうつ病に影響があることは想像に難くありません。Body Image and self-esteemにおいても、自尊心の欠如が精神疾患を引き起こすことが明記されています。そして、間違った身体イメージは自尊心を粉々に打ち砕きます。慢性的なストレスは一過性のストレスより体に悪影響を及ぼし、これは、なぜ、慢性疾患の患者が精神疾患にかかりやすいかという理由も説明しています。もし、間違った身体イメージに苦しめられているのならば、メディアとの接触を一度遮断してみるのもいいかもしれませんね。

 

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